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元請が飛んだときの債権回収(仮差押)

 

 

債権回収の相談の中で多いのが「元請が飛んだ」というものです。

 

工務店が下請として工事をしたのに、代金も支払わないまま元請が逃走したり、資金不足を理由に支払いを拒絶されることがあります。

 

債権回収が難しい状況ですが、迅速に動けば債権を回収できることもあります。

 

元請が飛んだとき、真っ先に思い浮かぶのが、発注者Aに対して、Bに支払うべき請負代金をCに直接支払ってもらうという方法でしょう。

 発注者A → 元請B → 下請C

しかし、そもそもAとCの間には契約はありませんので、Aとしては支払う義務はありませんし、仮にCに支払ってしまうと、後でBから請求されたときに支払いを拒めず二重払いのリスクをAが抱えてしまうことになります。

そのため、既発注工事分についてAがCに直接支払ってくれることは少ないでしょう(今後の発注分についてはBを除外した直接契約としてくれることはあります)。

Aとしても、不義理を働いたBよりも今後関係性を築けそうなCを優先してあげたい気持ちがあっても支払えない事情があるのです。

 

このようなときの正攻法は、BのAに対する代金請求債権を仮差押えしてから、Bに対する代金支払請求訴訟を提起し、判決取得後に本執行をするというものです。

この方法はとにかくスピード勝負です。

まず、AがBに代金を支払ってしまうと、差し押さえる代金がなくなってしまうので、支払より前に裁判所から仮差押命令を取得する必要があります。

そのためには、裁判官を納得させるための資料を急いで収集・準備する必要があります。建築工事の場合、口頭のみで工事の約束を済ませてしまうことも多いようですが、万が一の場合に速やかに仮差押という方法をとれるよう、注文書を普段から発行してもらうようにしてください。信頼でやっているから注文書は取らないという話を聞くこともありますが、実際に代金を支払ってもらえなくなったときには必ず後悔します。

 

また、裁判手続を用いるためには一定の資金も必要になります。

弁護士費用、裁判所に納付する手数料、印紙代に加えて、仮差押担保金として、押さえる金額の2~3割程度の金額を供託する必要があります。

さらに、仮差押が成功しても回収できないこともあります。すなわち、Bが破産をしてしまうと、仮差押は効力を失ってしまい、他の破産債権者と同じようにしか配当を受けられません。

 

仮差押えによる回収は、まさに時間との勝負となります。万が一のときに直ちに動けるよう、請負の約束は口頭だけで済まさず、注文書だけでも発行してもらうようにしておいてください。

 

大阪弁護士会所属  弁護士 永井 誠一郎
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