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夫婦間の契約は取り消せる?!

 

 今日は離婚とは関係なさそうなお話しですが、意外に関係がないわけでもないお話しです。

 

 以前、相談に来られた方で、

 

「主人は、5年前にも不倫が見つかったことがあり、そのときに、『自分の持っている土地をお前にあげるから離婚しないで欲しい』と泣きついてきました。そこで、私は主人からX土地を贈与するという書面をもらったのです。ところが、1年ほど前にまた、夫が不倫をしたので、半年前くらいから別居しています。さすがに今回は、私も離婚を考えています。ところが、先日、夫から連絡があり、『ネットで調べたら民法の規定で夫婦間の契約はいつでも取り消せるそうだから、前に約束した土地をお前にあげる契約は取り消す。あの土地は俺のものだ。』と言ってきました。私は土地をもらえることを前提に離婚を考えていたのですが、どうしたらいいのでしょうか。」

 

と仰る方がいらっしゃいました。

 

 

 この方は、無料相談で司法書士に先に相談したらしく、そのときの司法書士さんから、「確かに民法754条にそのような規定があるので、土地をもらう事は難しいのではないか、財産分与で争ってはどうか」と言われたということで、かなり落ち込んでおられました。

 

 

 さて、どう考えればいいのでしょうか。

 

 相談者のご主人が相談者に、土地をあげるという約束をしたことは、土地の贈与契約が2人の間で成立したと考えることができます。

 

 この点、確かに、民法754条には、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と書かれています。

 

 本件の土地の贈与契約は、夫婦の間でなされていますし、離婚する前から夫が取り消すと主張しているので、754条を素直に読めば、夫が取り消すと言えば贈与契約は取り消されてしまうようにも読めます。

 

 

 しかしそれでは、あまりに夫に都合が良すぎると思いませんか?

 

 

 似たような事例で、最高裁判所は民法754条でいう「婚姻中」とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなく形式的にも実質的にも婚姻が継続していることをいうもの、と判断しています(最判昭和42.2.2)。

 

 簡単に言えば、民法754条によって、夫婦間の契約を取り消すことができる場合とは、「夫婦が円満な間に締結した契約を、夫婦が円満なあいだに取り消す場合」に限定すると最高裁が判断している、ということになります。

 

 今回の場合、別居期間が半年にも及んでおり、既に実質的な婚姻関係は破綻していると評価できると思います。

 そうだとすれば、もはや夫は、民法754条で土地の贈与契約を取り消すことはできません。

 

 相談者の方には、最高裁の判例を示して、説明をさせて頂き安心して頂くことが出来ました。

 

 このように、条文だけを見れば相手の言い分が正しいように思える場合でも、実際には判例などにより条文が素直に適用されない場面もあります。

 

 周囲の法律に詳しい人がダメだろうと言っても、念のため、一度弁護士さんに相談してみた方が良い場合もあるかもしれませんね。

 

大阪弁護士会所属  弁護士 坂野 真一  

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