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付加金とは何か

先日の記事にて、残業代等の時効のルールが変わることを説明しました。

残業代等の賃金請求権だけでなく付加金の時効(厳密には除斥期間)も2年から5年(当面の間は3年)へと改正される予定です。

 

付加金とは、残業代等を支払わない会社に対するペナルティのようなもので、悪質性の程度といった諸般の事情に応じて判決により会社から労働者への支払いが命じられることのあるものです。

請求可能額は残業代等と額と同額までです。

ただ、請求する側としては残業代等だけでなく付加金も含めて回収できるとはあまり期待しない方が無難です。



〇 付加金とは

 

付加金とは、残業代不払等をした会社に対するペナルティのようなもので、裁判所が判決する場合に、残業代と同額まで認められる可能性のあるものです。

付加金について労働基準法114条が次のように定めています。

 

労働基準法114条(付加金の支払)

裁判所は、第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)若しくは第37条(時間外・休日・深夜労働の割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条9項(年次有給休暇中の賃金)の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から二年以内にしなければならない。

 

付加金は労基法違反があれば直ちに発生するものではなく裁判所の判決があって初めて発生するものです。

そのため、任意交渉や労働審判では付加金の支払が命じられることはありません。裁判中に和解した場合にも発生しません。

あくまで裁判手続を経て「判決」が下される場合にのみ発生するものです。

 

民事訴訟を提起せずに付加金も含めてきっちり回収して欲しいと依頼されても実現できないことにご留意ください。



〇 勝訴した場合でも付加金が命じられないこともある

付加金は、労働者の請求により、裁判所が裁量によって決定するものです。

裁判所は使用者による法違反の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容等の諸般の事情を考慮して支払義務の存否及び額を決定します。

付加金の最大額は、未払残業代等と同額までとされていますが、その範囲内で裁判所が諸般の事情を考慮して支払を命ずる額を決めることになります。

付加金が命じられる場合であっても、必ずしも最大額が認められるわけではなく、会社側の悪質性の度合い等に応じて決まります。

使用者側が残業代の支払義務の有無を合理的な理由を挙げて争っている場合などには、会社側は結果として敗訴した場合でもそこまでの悪質性がないので、付加金が命じられないこともあります。



〇 時効ではなく除斥期間

付加金は「違反のあった時から」2年以内(2020年4月1日以降は3年以内)に請求すべきとされています。

ここで注意が必要なのは、上記期間は時効ではなく除斥期間とされていることです。

内容証明郵便で催告しても時効を中断(完成猶予)することができません。

 

時効完成直前に残業代請求をご依頼いただく場合、訴状の作成等にある程度時間がかかりますし、会社と交渉している間にも毎月時効にかかってしまう分が生じてしまいます。

そのため、弁護士としては裁判外で内容証明郵便を会社に送付することによって、6ヶ月間は時効が完成しないようにします。

そして6ヶ月以内に交渉がまとまる見込みがない場合には、労働審判や民事訴訟の提起などを検討することとなります。

残業代等については、このような方法により時効の完成を妨げることができますが、付加金は内容証明郵便で催告していても毎月消滅してしまいます。

 

会社側に一定金額の支払意向が見られる場合、金額調整等のために交渉にある程度の時間がかかってしまう場合があります。

その場合、付加金は毎月消滅してしまいますが、裁判にせずに早期解決できる可能性の方を優先して交渉を継続することがあります。

後述のとおり、そもそも付加金の回収はあまり期待できませんし、一定の支払意向を見せていること自体、会社側が誠実に対応している評価されて付加金が命じられないことも考えられるからです。



〇 付加金支払を命ずる判決が出ても回収できないことも

実は、第一審で労働者が勝訴し、会社に付加金を支払うよう命ずる判決が下されても、付加金を回収できない場合があります。

付加金の支払を命じられる程度に悪質な会社に利用されたくないので詳しくは書きませんが、仮に私が会社側の代理人であれば、付加金の支払を免れるための方法をアドバイスできます。これは私に限った話ではなく、おそらく多くの弁護士が知っている方法だと思います。

そのため、付加金を現実に回収できる場合というのは、それほど多くはないでしょう。

弁護士としては会社側に対してプレッシャーをかけるためにも、残業代等の支払いを請求する際には、付加金も一緒に請求することが多いです。

しかし、請求する側としては、付加金まで回収できるとはあまり期待しない方が無難です。

 

大阪弁護士会所属  弁護士 永井 誠一郎    

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